美しい5月に
大学入学のために親元を離れて初めてのひとり暮らしを始めたかつての春の日。
音楽を学ぶにはドイツ語が欠かせないと思い、大学の講義が始まるよりひと足早くドイツ語の勉強を始めようと、ラジオのドイツ語講座を聞き始めました。その時のテーマ音楽が、シューマンの「詩人の恋」の最初の曲、「Im wunderschönen Monat Mai 美しい5月に」でした。この曲を聴くと、ひとり暮らしを始める心細さと、新しい道に対する希望とが入り混じった当時の気持ちが蘇ってきます。この時から現在まで、紆余曲折はありながらもドイツ語との旅はずっと続いています。
Im wunderschönen Monat Mai Heine
Im wunderschönen Monat Mai,als alle Knospen sprangen,da ist in meinem Herzendie Liebe aufgegangen.Im wunderschönen Monat Mai,als alle Vögel sangen,da hab' ich ihr gestandenmein Sehnen und Verlangen.美しい5月、花々が一斉に開くとき私の心にも愛が燃え上がった。美しい5月、鳥たちがあちこちで歌うとき私も君に想いを告げた。
(訳 Direttrice)
「詩人の恋」はハイネの詩にシューマンが作曲した16曲からなる歌曲集で、詩人の愛の喜びと、それが叶わなかった苦しみと嘆き、回想が歌われています。この第一曲目は春の瑞々しさと愛が生まれた喜びを歌っていますが、動詞に過去形が用いられていることから、もう既にそれは失われてしまったという哀しみを感じさせるものになっています。演奏は当時のテーマ音楽と同じ、ドイツリート界の神様、名バリトンのディートリヒ•フィッシャー•ディースカウ、伴奏はこれまた伴奏界の神様、ジェラルド•ムーアです。
Im wunderschönen Monat Mai(美しい5月)
Dichterliebe(詩人の恋)
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